かってにインパクトファクター

子育てサラリーマンが日々の雑多なことをつらつらと綴ってます。時々政治ネタ経済ネタコンピュータネタなどをはさみます。

論文盗用や不正データ、見抜く機関を提唱へ…学術会議

論文の不正があいついでいるので、日本学術会議が裁定機関の設置を提言することにしましたよというニュースです。提言したのかどうかは知りません。
一般の方からすると、学者さんは合理性の塊のようなもので、不正などという不合理な事はしないだろうとお思いの事と思います。
実際は違います。
というか、私から見ると、学者さんの世界でも不合理な人の方がのし上がりやすく、そのため不合理な論文も平気で出回ってしまうという感があります。もちろん近寄りがたいほど合理的な人もたくさんいることにはいます。しかし、合理的な人もやはり日本人的で、多くの場合、不合理な人の不合理な行いを咎めることを公の場で行いません。
少し前に、学生が書いた論文で、不正があったというニュースを聞きました。担当教授は見抜けなかったと言っていたように記憶していますが、ほとんどの場合、学生が不正を犯してまで論文を書こうと言う動機はありません。学生が論文を書きたい動機と言うのは、博士課程を卒業し、博士の学位をもらうための裏条件(明文化されていない場合が多々ある)に、第一著者の論文2〜3本というのがあります。普通学部生から併せて6年間ありますから、それほど高いハードルではないです。もちろん環境に強く依存はしますので、一般論ですが。ようするに教授が不正を指示したと言うと、大きな汚点になるから、学生が自主的にやったことにしといてねというなんかしらの取り引きがあったのでは?と思っとります。なんせ学位を握られてますからね。
では教授などの研究者には不正を行うような動機はあるのでしょうか。
小さな講座等の場合、”新しい現象を最初に発見した”ということはのちのちまで残るため、名誉名声という動機があります。不正と言っても極端に無いデータを作り上げるのではなく、生のデータを加工する段階で誤差の範囲で非常に都合の良い解釈を行うというケースもあります。かのメンデルも、遺伝の法則を発表した論文で数値を捏造したのではと言われています。なんせ狭い世界ですから、ちょっとした現象の発見でもその世界では有名人になれます。
大きな研究所などではもうちょっと事情が異なる場合があります。なんせ学閥がいまだに存在する世界。さまざまなコネがあります。研究所の前代や初代が提唱した説を否定すると後々の自分の身の振り方のみならず、即職を失う事にもなりかねません。国からお金をもらっていますが、結果が残せないと研究費を割り振ってもらえません。もちろん名声欲しさというのもあるのでしょうが、それ以上に別の複雑な動機が働いて論文でデータを捏造してしまう場合があるのではないかと思います。
科学とは何でしょうか?
人によって定義はいろいろあると思います。私は定番ですが、”再現性”だと言っておきます。おなじことをすれば誰がやってもおなじ現象が見られる。これが科学です(個人的な定義ですが)。
再現性の無い実験もあります。常温核融合*1の実験では、なぜかその人というかその場所でしか成功?しません。しかし、実はその実験室とおなじ壁をつくると再現できる(そのような実験をしたわけではなく、例えとしての話です)となると、常温核融合はこの成分を含む壁で作った実験室では検出できると言えます。誰がやってもできるとなるとそれは科学になるわけです。もちろんそれは常温核融合が起こっているのではなく、壁から出る放射線を検出しているだけという結果になるわけですが。
ということで、再現性の無い実験と言うものは存在しますが、再現性のない科学は存在しません。再現性が無いのは、想定していない何かに起因している現象を含んでしまっているだけで、全てが同じであれば、結果は同じになるわけです。
というと、反論されそうですから、先に断っておきましょう。量子論では電子の動きは確率的にしか表現できません。これは理論でも実験でもそうです。つまり、一個の電子では、全ての条件を同じにしても結果に再現性は得られません。しかし、非常に多くの電子で実験を行えば、誰がやっても同じ傾向が得られる(確率的なのですから当然)ので、”再現性”があります。確率を含む現象も再現性が得られれば科学と言ってよいかと。
とながながと講釈を垂れてしまいましたが、データを捏造したり不正に加工したりすると、再現性が得られません。一番の問題は大きな研究所では、そこでしかできない研究を多く含んでいるため再現性の確認がそこ以外でできません。なので、研究所でおこなわれる不正は百害あって一利なしと言えます。科学者のやることではないですね。
話を元に戻しますと、上記の理由から再現性の無いデータは科学ではありません。不正な論文を書くと公費を使っている以上なにかしらのお咎めがありますよということを明確に示した上で厳しく取り締まってゆくことは当然必要なわけです。
まぁ私としては、学術の世界にはびこる不合理な人々を一掃してくれる方が嬉しいのですが。
外国の学会では、不正行為を防止することは難しいとしても、同じデータで解釈が異なる以上、どこかの企業に支援を受けていたりしたら、その旨を論文に明記することが非常に望ましいとして、不正まで行かないにしても見方が偏っている可能性があることを論文読者に分かるようにしているところもあったと思います(うろ覚えですのでリンク等はありませんが)。

*1:論文が見当たらないので詳しく知りませんが、普通の気温で核融合起きたらすごくね?という実験です。理論的には起こらなくもないと思いますが、それでエネルギーを取り出すのはタイムマシンとおなじくらい難しいです。