かってにインパクトファクター

子育てサラリーマンが日々の雑多なことをつらつらと綴ってます。時々政治ネタ経済ネタコンピュータネタなどをはさみます。

私事

ネットにちょっと面白いコラムがありました。

学校では教えてくれない研究者の就職事情


ということで、今回はこのコラムを書いた方の客観に私の主観を交えて見たいと思います。
先にリンク元を読んでいることが前提になっております。

2.どんな大学に進学すればよいのか

むやみに有名大学を志望するのではなく、高校、大学においては、時間的・経済的に無駄の少ない生き方をして、しかるべき指導が受けられる大学院に入学することが、研究者になるためのベストの選択であると私は思います。


私は、大学院は某国立大学なわけですが、大学は公立大学です。私の通っていた大学は、補助してもらっている県に還元することも目的としてあったので、その県出身の学生は学費等で比較的有利(入学試験は別)だったのです。私は博士になることが前提だったので、大学は一つの通過点に過ぎませんでした。振り返ってみても良い選択だったと思います。大学は理学系で、大学院は工学系。学際的な研究がはやっていたので、結構広い就職口があるかと思いきや、進んだ分野があまりよくありませんでした。

国公立の研究所や大学院大学などで、学生の身分で給与をもらえる所が増えていますし、そこでは出身大学は一切関係ありません。もし私が10代後半から人生をやり直しできるのなら、通信制の大学で大卒の資格だけ取って、学生の身分で給与をもらえる大学院に入ることを選択肢に入れます。

実は私も博士課程では、RA(リサーチアシスタント)として給与をもらっていました。月4万円程度なので、毎年増えてゆく学費をまかなうには若干少なかったわけですが、それでも非常に助かりました。
ちなみに、私は大学からやり直せても通信制は選択しません。実際の授業では、先生の無駄話も一つの経験ですし、サークルでも非常に良い経験が出来ました。アルバイトばかりして終わらせてしまうくらいなら通信制の方がましというくらいです。大学に通うということで得られるものは非常に多いと考えます。
大学のサークルで得た経験は未だに私の自信を根底から支えています。

3.学費はいくらかかるのか

いくらかかるんでしょうか。学費が50万円/年程度で、生活費は私は8万/月で生活していたように思います。この費用は修士までは親に出してもらっていました。博士課程からは育英会の1種(利子がつかない)がもらえたので、親からの援助はほとんどなく、RAとあわせて一月16万円あったので、十分な貯金も残せました。でも、たぶんこのとき彼女がいたらこれでも足りなかったんでしょうけどね。
ということで、結構お金はかかります。奨学金は親の収入や成績、所属大学の卒業生の返納率などの影響からもらえたりもらえなかったりします。博士課程まで行けばけっこうな確率でもらえると思うのですが、”もらえないとやっていけない”という人はがんばってよい成績を維持するしかないでしょうね。
私の周りの話ですが、学振をもらっている人がいました。これ毎月20万円を給付(返さなくて良い)としていただける制度です(若干語弊を含みます)。これをもらっている人は、大学の基準で自活できるが収入が少ないということで、授業料の免除とか半分の免除を受けていました。学振をもらっている人は十分ゆとりのある生活ができ、学会等も研究費から出せるというのに、さらに授業料もお安くなるんですよね。ちなみに、これを実力でもらおうと思うと、一年一本以上のペースで論文を書くなど非常にがんばらなければなりません。ある意味お偉い先生の下につくのが一番の近道だったりする日本の不思議がまだ残っていたりします。
私学では、博士課程だけ何かしらのリターンがあって、実質授業料がお安くなっているところもあると聞いたことがあります。ただ、個人的にはそれに頼るのは良くないと思います。いつ制度が変わるか分かりませんし、おまけ程度に考えておくのが無難でしょう。そういえば、国立大学でも博士課程の授業料免除を実施した大学がありました。
そうそう注釈8

意外に負担になるのが「学会などの費用」です。交通費や宿泊費は支給されるとしても、参加費や懇親会の費用まできちんと計算して支給されることは少ないです。その分は自己負担。その他、書籍代も結構かかります。

わたしは国際会議に出席した際に、15万円以上自腹切りましたね。今の制度では学生に旅費を(正式には)払えないので、基本は自腹です。でも多くの大学では”アルバイトを行った”という名目で旅費を支給しているというのが現状みたいです。私のいた研究室ではそういうことをしていなかっただけなんです。

4.博士号はどのようにすれば取れるのか

たしかに、取りやすいところと取りにくいところがありますね。さらにいうと、とったあと、つぶしが効き易い研究と効き難い研究があります。要するに応用しやすいかどうかということ。ただ、私は研究者として生きてゆくのであれば、いろいろなことをしてみるべきだと思います。多少専門から外れても、興味がある、チャンスがあるなら飛び込んでみるべきなんでしょう。偉そうなことはいえませんが。一番大切なのは、独力で研究できる力を院生の間につけることです。そして、つけさせてくれる研究室に入ることです。ゼミはきっちり行っているか(私のところはしてなかったので、私が勝手に学生集めてやってました)とか、卒業後の進路を調べると良いかもしれません。

5.どんな所に就職しているのか

私の同期はポスドクでも結構給料の良いところにいきました。アルバイトですからボーナスは出ませんし、福利厚生等もありませんが、月給50万円です。私の給料は27万ですが、人事系の方のお話によると会社の経費としては1.7培になるらしいです。
ボーナスも含めて比較すると、実質57万円程度になります。さらに残業代もつきます。交通費も出ます。単純に給料だけを比較すると、高給なポスドクといえども魅力的とはいえません。ちなみに、もう一人の同期も同じアルバイトで手取り26万です。さらに運が悪いと月4万円コースもあります。しかもどれも任期付き。そしてパーマネント(正社員に相当)は倍率が異常に高いと。人生がやり直せて研究者を目指すなら、親に頼み込んで高校の間に数年英国圏ですごし、日本の大学院卒業後、アメリカなどを目指すかもしれません。


最近ちょっと民間企業に染まってきた私の立場から言わせていただきますと、大学の研究で企業が必要としているのであれば、修士卒の新入生を捕まえて研究室に放り込めばよいだけですし、ある研究分野の知識が欲しいからという理由で博士を取るメリットはあまりないと思います。もちろんどんぴしゃなら別ですけど。やはり期待するのは、研究に対する姿勢であるとか、リーダーシップ、豊富な経験です。民間に行くにしても、公的な研究所に行くにしても、その辺を意識しながら5年間を過ごしてもらえると、どこでもやっていける(と言い切れる)のではないかと思います。


なんだか、書けば書くほど魅力に欠けてゆくような気がします。
最後の駄目押しとして、私が教授を目指す道を選ばなかったネガティブな理由を挙げてみたいと思います。
第一は、実力以外のものが昇格に大きく影響する。
第二に、思ったより広い範囲に手を伸ばせない。
第三に、給料が見合わないような気がする。
です。もちろん勘違いや実力がなかったからということもあるかもしれませんが、なんとなくなりたいという程度の動機でやっていけるような職業ではないんですね。


もちろんいいところもいっぱいあるんですよ。でもそれは、はやり院まで進学して、身近に感じていただくのが一番良いかと思います。