かってにインパクトファクター

子育てサラリーマンが日々の雑多なことをつらつらと綴ってます。時々政治ネタ経済ネタコンピュータネタなどをはさみます。

論文の信頼性に問題、遺伝子研究で生データなし…東大

昨日の続きだと思うのですが、なんだかひどい状況に。
東京大学の研究員が書いた論文のデータが再現性に乏しいと言うことで、調査しているようですが、元々実験すらされていなかった可能性が出て来たようです。
ちょっと記事を抜きだしますと、

多比良教授らが英科学誌ネイチャーなどで発表した12本の論文について疑問を持った「日本RNA学会」が今年4月、同大学に調査を依頼したため、同研究科は同月、調査委員会(委員長=松本洋一郎教授)を発足させ、調査を続けてきた。

で、やってもいないかも知れないデータでネイチャーに載っちゃうんですね。

その結果、論文のすべてにかかわった助手は、生データのほとんどをコンピューターに直接取り込み、一部のコンピューターはデータを保存せずに廃棄していたことが明らかになった。手書きの実験ノートも残しておらず、実験が実際行われたかどうかも確認できなかったという。

実験結果の生データを直接コンピュータで取り込むのは、我々の業界では当り前なんですけど、生物系ですからね。たぶん、東大の調査委員会の人がやって来た時に、
”いや、実験はしましたよ。したんやけど、データ無くしてね。”
”ちゃうねんて。僕ら実験ノートはアナログでつけてないねん。なんかフォーマットとかいうボタン押したらデータ消えてもてん”
”うちら生データも紙にかかんと直接コンピュータに打ち込むからそれもなくなってもーてん。”
"いやほら実験室においてたコンピュータに溶液がかかってもうて・・・"


かなり苦しいいいわけですね。
ちょっと捕捉しておきますと、物理を調べる実験では、計測は最終的に電圧電流値を見ることになるので、最近はほとんどデジタルで取り込まれ、紙に印刷する段階では既に何らかの加工(FFT等)が施されています。そんな状況でも、実験ノートはだいたいつけてるんじゃないですかね。後々の自分のためでもあり、後輩等に資料として残すという意味もあります。特に失敗した事は結構重要です。
生物化学系の実験では、データを取り込むのが人力であることが多い(と思う)以上、直接コンピュータに入力することは少ないのではないでしょうか。実験ノートが無いというのはボヤ以外ではありえません。


科学の研究において、データの捏造はマイナスにしか働きません。ただ、小さい装置でも出来る実験であれば、他の実験室でも論文通りにやってみて、再現出来るかどうかは分かります*1、大型の実験装置で捏造をすると、事態は一変します。なんせ他では試せません。そして、その捏造データを参照しながら次の大型装置の計画を立ててしまうと、経済的にどれだけの損失になるのか想像できませんね。


研究者の倫理感も大切ですが、まわりの監査の目を強化し、また学生の内に実験に対する姿勢やデータの読み方をもっと重点的に教えた方が良いと思います。

*1:化学や生物の実験は職人技と言われ、論文通りにやってもなかなか再現が難しいとう状況でもあるみたいですが。今回もその辺を利用しようと思ったのかもしれません。