かってにインパクトファクター

子育てサラリーマンが日々の雑多なことをつらつらと綴ってます。時々政治ネタ経済ネタコンピュータネタなどをはさみます。

ようやく

私の研究室では同期の学生が私を含め3人います。当然全員博士過程の5年生(5年一貫)で、今は論文の審査も終り、後は無事学位を授与してもらい卒業するだけと言う体勢なのです。
私は既に去年の5月には民間企業から内定を頂いていたので、最後の博士論文をこなせば後はなにも気にせずただ時間がすぎるのを待つだけで良いと言う状態だったわけですが、残りの二人はいわゆる研究職につくつもりでいたため、就職活動が必要だったのです。
そのうちの一人は以外にもすんなり某大手研究所にポストドクター(ポスドク)として就職が決定していたのですが、残りの一人は今年3月に入ってもまだ進路が決まっていませんでした。ということで、今回は残りの一人(仮にK)にしぼって博士の就職活動がどんな感じだったのか見て行きたいと思います(個人的な感想を言えば、私やすんなりポスドクが決まった彼は運が良い方だと思います)。


11〜12月といえば、博士過程の人間からすると予備審査といわれる発表会に向けて博士論文を書いたり発表原稿を書いたりと結構大忙しな時期です。我々も11月後半から12月中ごろに書けては例に洩れず大忙しだったわけです。
私のいる業界は、研究に大きなコストがかかるため、政策に左右されやすく、出来るだけ先が長く大きな研究所に行くことが今後も考えると有利に働きます。Kも比較的大きな研究所(以後A研究所)を目指していたわけですが、最近は組織の再編等あって、なかなか受け入れ先の状況が決まらず、ポスドクの募集がどれくらいあるのかわからない状況でした。1月に入ると1月末日までに書類を提出ということがようやく知らされるようになります。この時期はそれほど忙しくありませんが、最終的な提出用の論文を仕上げつつ、最後の発表原稿を作っていました。1月末にポスドクの書類を提出して、後は合否を待つだけという状況なわけですが、どこの業界もそれほど広いわけではないので、行きたい研究所にも知合いの一人や二人はいたりします。2月の段階でどの程度応募があったのか聞くとなんと倍率は10倍近くあったそうです。一つの大きな研究テーマがあっても、実際にはその中は非常に細分化されていて、どこもある程度人を欲しがっています。しかし人は足りなくても枠が無いという事は多々あります。そうなってくると限られた予算の中で誰をとるのかというより、どこの先生の要望を聞くのかという感じになって来るわけです(あくまで推測ですが)。大きな研究所では、雇用の不平等があってはいけないということで、人員の選考は外部に委託するというシステムをとっている事があるようで、このA研究所も外部の先生に選んでもらうという方法をとっているようでした。そして、2月の中ごろに、A研究所内部の人に選考の進行状況を聞いてみると・・・なんとまったく進んでいないようだったのです。なんでもどこの外部の先生に選考を委託するのか話し合ってるとかで。そして3月に入りようやくいつ頃に結果が出るのかが決まります。ちょうど選考結果がでる付近で、私のいる研究所の先生がA研究所に出張することがあったために、こっそり結果を聞いて来ました。しかし残念なことに結果は不採用でした。

不採用という結果は残念ですが、2月の時点で倍率が10倍あると聞いていたわけですから、ある程度は心の準備をしていたようです。2月のはじめの時点で、自分の所属する研究所(私のいるところでもあります)のポスドクに応募し、他の研究室にも枠が有るのか打診していました。同じ研究室のOBの方が同じくポスドクで採用されていて、枠がまだあるよという連絡を入れてくれていたのです。研究者としてやって行くのであれば、自分の所属している研究所にポスドクでやとってもらうのは、出来れば避けたい選択肢です。ポスドクの間は経験を積む期間で、なるべくいろいろなところを渡り歩く方が良いと私は考えます。さらに、私のいる研究室でポスドクからパーマネントへと行くためには、牛耳っている先生におもねる必要が有ります。そういう先生なのです。そうなると、他の研究室に行くことを優先して考えるべきでした、そこはどうも出身者が民間へ流れる傾向が強いようなのです。民間へ流れる傾向が強いという理由としては、研究がマイナーで受け入れ先が無いとか、ポスドクではあまり力がつかないとかいくつか理由は考えられそうです。

結局Kの選択は、都合上自分のいた研究室に数ヵ月ポスドクで所属し、OBの紹介のある研究室を経由して民間へ流れるというものでした(まだ最終ではありませんが)。

ポスドクは基本的に年単位の契約で私の周りでは3年が多いようです。ポスドクを2回こなすと27際で大学院を卒業しますから、その時点で33歳です。ポスドクは35歳までという制限がよくあります。普通はポスドクをしながらパーマネントの枠を探し35歳までには助手等のポストにつくことを目指します。別に35歳以上でも助手のポストは探せますが、下からどんどん出て来ますから、この時点でパーマネントにつけない人は(というかほとんどがそれ以前で)あきらめて民間へと流れて行くわけです。数年前には私の先輩だった人達も来年度から(もしくは既に)民間へ就職しますよという噂を良く聞きます。運良く大手研究所へポスドクとして行けることになった同期も、3年後の進路は分かりません。個人的な感覚ですが、7〜8割くらいはドロップアウトしているのではないかと思っています。

非常に厳しい世界を生き残っている人達は、はやり優秀な人も多いですが、それ以上に運とバイタリティーと導いてくれる人が必要みたいです。
今の現状では準公務員の立場で研究する枠に収まることは結構大変です。せっかく優秀な人材が埋もれているのだから、せめてもう少し積極的に企業も採用枠を増やしてくれると、博士過程の皆さん全体が少し幸せになるのになぁと思います。


とながながと書いてしまいましたが、とりあえず私の同期は行き先が全員決まったということでようやく5年間お疲れ様の打ち上げが出来そうです。